ファッションの歴史を思い返すと、華やかなブランドやデザイナーの名がまず浮かぶ。しかし、その舞台裏で「誰が美として選ばれ、誰が見えない存在にされてきたのか」という問いを、長い年月にわたり投げ続けてきた人物がいる。ベサン・ハーディソン──モデル、エージェント、アクティビスト。ファッション業界における人種的多様性を切り拓いた先駆者でありながら、その功績は十分に語られてこなかった。ドキュメンタリー『インビジブル・ビューティー ランウェイの革命』は、彼女の知られざる軌跡に光を当てる。作品には、ベサンを「第二の母」と慕うナオミ・キャンベルをはじめ、ゼンデイヤ、イマン、タイソン・ベックフォード、ウーピー・ゴールドバーグ、ラルフ・ローレン、ブルース・ウェーバーら、時代を形づくってきたモデルやクリエイターが登場。豊富なアーカイブ映像と証言を通して、1970年代から現代へ続くニューヨークのファッション、アート、カルチャーの変遷が鮮やかに立ち上がる。共同監督は『ディオールと私』のフレデリック・チェン。ハーディソン自身とともに完成させた本作は、ファッション史に埋もれてきた一人の女性の功績と、母としての葛藤や孤独、そして再生を静かに見つめる。多様性、社会変革、そして人生。時代を変えた一人の女性の物語。